理想の生活
今日は、国立博物館の「クリーブランド美術館展」に行ってきた。
国宝級の日本画コレクションで有名な、アメリカ・オハイオ州にある美術館の収蔵物がめあてである。
いつも思うのだが、欧米人のコレクターの美意識というのがいまいちぴんとこない。
なにか少し違うような気がする。
今回も「勉強させていただきました」という感じで、ぜひ押したいアイテムはあまりない。
ただ、ひとつだけハートのど真ん中を射貫かれた作品がある。
室町時代の無名画家が描いた「琴棋書画図屏風」。
松の樹下で、中国の文人が囲碁をしたり、書を書いているありさまを描いているだけなのだが、これがとても良い。
二双の屏風に、それぞれ画題があるわけだが、並べてみると、それぞれの端にいる中国文人のあいだが空漠として広がりがあり、二双の空間的連携を保証するものが童子が戯れる小川という素敵な構図だ。
松と岩という自然を背景にして、書物机、碁盤、文机と文房四宝(筆・墨・紙・硯)と水差しという工芸(人工)が並んでいる。
自然と文化の理想的な調和だ。
ほんとはこういう生活がしたいんだな、と改めて思い返した。
なのに、仕事ばかりの日常ってなに。
ぼくって、なんなの。
思春期の戸惑いだな。
やっぱり、自分のほんとはここにあると思った。
魂のふるさとといえば、言い過ぎかもしれないが、それに近い。
図録を買って家でこの図を眺めながら、つくづくそう思う。