solon’s blog

英日日英、中日日中の翻訳業。外国語トレーニングを中心に書いています。

迷走王

今日は風呂場の大掃除。
天井から排水溝。引き戸の敷居の隙間まで磨いた。


われながら革命的なピッカピカ。
数日かぎりの清浄とはいえ、気分がいい。


今年もあと一日。
今日は「兆民先生伝・兆民先生行状記」(幸徳秋水)を読了した。


中江兆民篤介の人生は、颯爽とした青年期と貧困に苦しんだ壮年・晩年ではっきりと明暗が分かれる。


坂本龍馬と親しくした少年時代。
フランス語の天才ともてはやされた青年時代。
土佐出身のくせに、薩摩閥の大久保利通に直談判して洋行したフランス留学。
漢文の古典を仏訳して異名をとどろかせた留学生時代。
そして、民約論の翻訳。


自由民権運動に敗れてから、兆民の迷走がはじまる。
どうも酒乱だったらしい。
大酒して意味不明の迷論をぶちあげ、怒号し、革命を号令する。
しかし、翌日酔妄から醒めると、いっさい記憶がない。


こんな人には親近感がわく。
思想家だった兆民は、商売をはじめることを思いつき、北海道に会社を作り、娼館の経営まではじめようとするが、ことごとく失敗する。起業するたびに、財産が減り、住むところの格が落ちる。


弟子の幸徳秋水は、書生兼玄関番として、だんだん格落ちする借家住まいに粛々とつきあった。


悲劇的な生涯だが、秋水の筆にかかると、しみじみとした諧謔の滋味がただよう。
秋水の文才と、兆民への敬愛の気分が醸しだす絶妙の境地だ。


年末によい本にめぐりあった。