なぜヤマンバは怖いのか
枯れ葉に埋もれた新宿御苑を散歩している。
ところどころ紅葉が残っているものの、常緑樹をのぞけば葉を落とした木ばかり。
もの寂しい冬枯れの景色をみるたびに思い出すのは、柳田国男の「遠野物語」。
娘時代に行方知れずになった女が老婆となって実家に帰ってくる。
その髪はヨモギのように乱れ、着物はぼろぼろ。
破れた着物は木の葉でつくろってある。
女は山人の妻、山姥となっていた。
強い風の吹く日にかぎって現れ、山を鳴らす風とともに去ってゆく。
紅葉の季節になると、この話を思い出す。
なぜか、ぞっとする。
冬枯れの木立のなかに覗く紅葉した木。
美しいのだが、なぜか怖い。
なぜ山姥は怖いのだろう。
そんなことを考えながら、御苑の紅葉山を散策した。