solon’s blog

英日日英、中日日中の翻訳業。外国語トレーニングを中心に書いています。

いたずらなチェロ

オペラシティのツリー

バッハ コレギウム ジャパンの演奏会に行った。
題目は歌劇「リナルド」。
ヘンデルのオペラを、演奏会形式で上演したもの。


主人公は十字軍の騎士リナルド。そして十字軍司令官の娘で恋人のアルミレーナ。
敵役は、イスラムの王アルガンテとその恋人、魔女アルミーダ。


この演目でいちばん有名な歌は、アルミレーナのアリア「私を泣かせてください」だが、今回は魔女アルミーダのアリアがいちばん良かった。
太めのソプラノ歌手レイチェル・ニコルズ絶唱がすばらしい。
このアリアが歌われた第二幕の終りは、レイチェル・ニコルズに絶賛の拍手が続いた。


この歌劇に出演する男性歌手の主要な役どころは、主役リナルドのティム・ミードをはじめカウンターテナーが多い。


気になって調べてみたら、ヘンデルの頃のオペラは女性が出演せず、男役女役ともにほとんどの出演者がカストラート(去勢した男性歌手)だった。
そのため、ヘンデルのオペラを演奏するときは、主要な役はカウンター テナーが歌うことになっているとのこと。


ワグナーやヴェルディなどのオペラに慣れていると、カウンター テナーの歌声にあまり力強さを感じないが、当時はこれが人気だった。
カストラートの声に失神する女性もいたとか。


座った席がS席で、舞台を横手から見下ろせた。
指揮者の顔をみながら演奏を聴くなんて、めったにできない経験をした。


この歌劇では、効果音として小鳥の鳴き声を楽器で演奏するのだが、これはティンパニとリコーダー奏者の役割だ。
音色どころか、まるで会場に鳥がいるのかとおもうくらいそっくりな音だった。


ところがもう一人、演奏している人がいる。
なかなか分からなかったが、チェロ奏者がこっそり参加していた。
すばやく動いて観客にはわからない。
謎の音として、一緒に見た人たちと情報交換しながら、やっとつきとめた。


そういえば、このチェロ奏者の初老男性は、リコーダーとティンパニが小鳥の音色を演じていると、妙にいたずらっぽい目つきで隣のオーボエの女性と互いに目配せしていた。


演奏者の表情まで、オペラグラスをつかわずに見えたおかげで、いろいろ楽しい発見があり、終演後ワインを飲みながら、同行者たちと話がはずんだ。