solon’s blog

英日日英、中日日中の翻訳業。外国語トレーニングを中心に書いています。

文字情報とビジュアル情報

このところ、某翻訳業界も不況だ。
製造業、金融証券、ITが軒並みだめなのだから、稼ぐ場所がない。


それに加えて、最近気になることがある。
世紀が変わってから、文字情報の価値付けが下がっているのではないか。
都市部の大書店をのぞく普通の書店の惨状はごぞんじのとおり。


やたらAmazonで本を買うのは、欲しいものが店頭にないからだ。
このあいだ、英語の諺辞典を探していたら、大書店の店頭でごく薄いのみつけただけ。
Amazonにはあった。
ただし、昔いいなと思った辞典は絶版。


このごろの英語学習には、諺なんて不要なのかな。
翻訳者としていうと、諺は英語の仕組みのショーウィンドーみたいなものだから、諺が分かっていないと変化球(ジョークを含む話し言葉など)には対応できない。


いまの本はすかすかのスペースとイラスト、写真で売る。
中世ヨーロッパの都市・農村では、教会の彫刻やステンドグラスが知的教養のベースだった。
情報社会とはいいながら、実は情報敗者となりつつあるのが、この国かもしれない。


10年以上も前に出た経営コンサルタントのビジネス書では、20世紀末から21世紀初頭は「虚の情報」が世界の潮流となると予言されていた。
金融・証券の株価とそれをめぐる情報が、まさにこの「虚の情報」だった。


「虚」とは、嘘ではなく、実体と乖離した「数字の一人歩き」、いいかえれば増殖し、行き場を失ったグローバルなバブル マネーのこと。


「虚の世界」に巻き込まれたからには、実体をベースにした「文字情報」など無縁で、見る側が勝手に解釈するビジュアル情報のほうが「軽くて」いごこち良い。


ちなみに経営コンサルタントは、「虚の情報」の次は「空の情報」が時代の主流になるという。
「空」とはなにか。


「無一物中無尽蔵(むいちもつちゅうむじんぞう)」という禅の言葉に表されるものだと思う。


2015年までには、クラウド コンピューティングの世界が実現し、その後にはスカイ コンピューティングの世界がくる。


あと20年語の世界が、「電脳空間カウボーイ」(ネットワークに神経接続できるハッカー)の荒野となるか、ケータイ猿から退化した「ネット猿」の飼育檻となるか。


どっちにもなれそうにないから、ネットワークに神経接続して電子図書館を利用したいな、わたしは。