敬愛できる作家吉村昭さんについて
吉村昭さんが亡くなった。
この人は、言葉の本当の意味で尊敬できる文学者だった。
派手なベストセラーはないが、心ある人なら忘れることのできない名作をたくさん書いた方だ。
ヒグマ撃ちの猟師たちが孤独に戦う姿に象徴されるように、自然や生命に畏敬の念をもつ純粋で不器用な男を描くのが、吉村さんの作品の特徴だ。
人交わりが苦手な人間を描く一方で、歴史の敗者となっていた人々の尊厳をつよく訴えかけた作品もある。
吉村さんの作品は、絶対に消えないとわたしは確信している。
ひとに心がある限り、決して古くなることなどありえないからだ。