完全数28
「博士の愛した数式」(小川洋子)を読んだ。
佳作だと思うが、読んだあとなんとなくさびしい。
アマゾンでは、人生の祝福という書評があったのだが、しっくりこない。
人生って、こんなにしみじみと綺麗でさみしいものだろうか。
ところで、博士が大好きな江夏の背番号28は、「完全数」だそうだ。
「完全数」とは、自分自身を除く約数の和が自分と等しい数のこと。
ピタゴラス的な数の調和が、この作品に祈りのような宇宙感覚を与えている。
そこはわかったが、なぜかさびしい。
それにしても、作品中に出てきた「オイラーの定理」と人間関係のメタファーがわからない。
どういうことなんだろう。
作者の意図を理解するには数学を勉強しないと、ダメか?
さらにいえば、この小説のラストも感動的ではあるが、考え込んでしまった。
江夏がすでに引退して野球選手としては存在しないことが、この小説の本質にかかわっている。
詩的な美しさは認めるが、これでいいんだろうか。
こういう叙情にみちた悲哀の哲学は好きではない。
人生とは、もうすこしたくましくて、確かなものだと思うから。
- 作者: 小川洋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/11/26
- メディア: 文庫
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