solon’s blog

英日日英、中日日中の翻訳業。外国語トレーニングを中心に書いています。

完全数28

博士の愛した数式」(小川洋子)を読んだ。
佳作だと思うが、読んだあとなんとなくさびしい。


アマゾンでは、人生の祝福という書評があったのだが、しっくりこない。
人生って、こんなにしみじみと綺麗でさみしいものだろうか。


ところで、博士が大好きな江夏の背番号28は、「完全数」だそうだ。
完全数」とは、自分自身を除く約数の和が自分と等しい数のこと。


ピタゴラス的な数の調和が、この作品に祈りのような宇宙感覚を与えている。
そこはわかったが、なぜかさびしい。


それにしても、作品中に出てきた「オイラーの定理」と人間関係のメタファーがわからない。
どういうことなんだろう。
作者の意図を理解するには数学を勉強しないと、ダメか?


さらにいえば、この小説のラストも感動的ではあるが、考え込んでしまった。
江夏がすでに引退して野球選手としては存在しないことが、この小説の本質にかかわっている。


詩的な美しさは認めるが、これでいいんだろうか。
こういう叙情にみちた悲哀の哲学は好きではない。


人生とは、もうすこしたくましくて、確かなものだと思うから。


博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)